Luck & Pal

これまでの記事

Saturday, August 27, 2005

 

4.音楽プレイヤーの持つ優位性

前回はガジェットについて考えました。その結論の一つは、ガジェットにはその機能によって「楽しむガジェット」と「使うガジェット」の二つの区分があるというものでした。今回は前者の「楽しむガジェット」の代表的存在である、iPodについて考えてみようと思います。

まず、「楽しむガジェット」について、前回の結論から整理してみたいと思います。「楽しむガジェット」とは、人間の「見る」、「読む」、「聞く」、「話す」という4つの行動にフォーカスした携帯型小型機器で、それを一言で表現すると、「いつでもどこでも、好きなものを、好きな時に、好きなだけ見たい/聞きたい/話したい」という欲求を満たす携帯型デバイスである、というものでした。

iPodはそのうちの「聞く」にフォーカスしたデバイスでした。当初のiPodは「聞く」、すなわち音楽機能にフォーカスした音楽プレイヤーでしたが、現在のiPodは音楽だけでなく、文章を「読む」ことや、画像を「見る」こともできるようになっています。さらに、最近ではiPodにビデオ機能が加わるのではないかと言われはじめており、iPodが音楽プレイヤーの域にとどまらず、複数のメディアが扱えるマルチメディア・デバイスになるのではないかと推測されています。すなわち、iPodが耳だけでなく、目も使うデバイスに変わって行っているのです。

iPodが「目を使うデバイス」に変化していくとすれば、そこには一つの問題が生じると思います。音楽は耳で聞くだけでOKですが、画像や文章やビデオなどの目を使うメディアは、表示されるディスプレイが小さいと見にくかったり、目が疲れてくるなど、視聴の品質に関わる問題を抱えることになります。

人によって感じ方は違うと思いますが、現在のiPodの画面は小さいと思います。小さい画面でビデオを見続けると、目が疲れます。iPodが耳だけでなく、目も使うデバイスに変わって行くのであれば、ディスプレイが小さいという点で問題を抱えることになるのではないかと思うのです。したがって、ディスプレイという観点からすると、iPodには次の3つの道があると思います。

ディスプレイが大きくなれば、画像も、文章も、ビデオも見やすくなるでしょう。しかし、iPodのサイズも大きくなり、携帯性が損なわれてしまいます。iPodが基本的に音楽デバイスであることを考えると、単にディスプレイを大きくしても、それが全体的な音楽体験の質を盛り上げるものでない限りは、かえって邪魔になりかねません。そこで、音楽プレイヤーとしてのiPodとは別に、ピクチャとビデオやテキストの表示を前面に打ち出した、画面の大きなデバイスが新たに登場する、という第二の可能性が考えられます。これまでのiPodは音楽が聴け、ついでに画像も見られるというデバイスになっています。さらにはビデオも見られるようになると幅広く予測されています。この「第二の可能性」は、画像やビデオが見られ、ついでに音楽も聴けるというものです。

「第二の可能性」は、果たしてiPod以上の成功が収められるでしょうか。いずれも音楽、画像、そしてビデオを扱うことが可能という点では全く同じです。しかし、音楽、すなわち「聞く」に軸足があるのか、画像そしてビデオ、すなわち「見る」に軸足があるのかという点で、それぞれ対極に位置しています。つまり、音楽ベースの方が有利なのか、あるいは画像・ビデオをベースにした方が有利なのか、という事になります。

音楽はいつでも聴けます。車を運転しながらでも、歩きながらでも、本を読みながらでも、あらゆる場所で、あらゆる時に、好きなように聞くことができます。その一方、画像やビデオを歩きながら見ることはあまりないし、本を読みながらということも少ないし、運転中に見ると危険を伴うし、何かほかの事をしながら見るという機会はほとんどないでしょう。

なぜならば、目では複数のものを同時に認識することが難しいため、画像やビデオを見ると、それまで見ていたものから注意がそれてしまうからです。音楽は耳で聞くので、目の作業を邪魔しません。しかし、画像やビデオは目で見るので、それまでの作業が一時中断されてしまいます。そのように考えると、「音楽を聴くことのできる機会は、画像やビデオを見ることのできる機会よりも幅広い」ということになります。また、耳と口で会話する携帯電話も、目を使う画像やビデオより利用可能な範囲が幅広いと言えるでしょう。

したがって、同じ音楽・画像・ビデオをサポートしたデバイスであっても、音楽に軸足のあるデバイスの方が、画像・ビデオに軸足のあるデバイスよりも利用範囲の広いことがわかります。そう考えると、画像や動画に軸足を置いたiPod的新デバイスは、音楽に軸足を置いたiPodよりも利用範囲が限られ、ディスプレイが大きい分、携帯性も損なわれ、あまり有利とは言えないものになりそうです。

つまり、画像や動画に軸足を置いたiPod的新デバイスが出ることも考えにくいし、音楽デバイスのiPodが、画像やビデオ機能に妥協するかたちで、ディスプレイを大きくするということも考えにくくなってきます。だから、上に挙げた3つの可能性のうち、最も可能性が高いのは、3番目の「iPodは音楽デバイスであり続ける」だと思います。

そのように考えると、幅広く予測されているビデオiPodは、「音楽再生のついでにビデオも再生できる」、というものになるのではないかと思います。iPodが画像表示機能やビデオ機能など、ますますマルチメディア化していくとしても、こうした理由から、iPodが音楽以外に軸足を移す可能性は低いと思うし、iPodより画面の大きな新デバイスが登場する可能性も低いと思います。

しかし、それでは先に挙げた「ディスプレイが小さいという点で問題を抱えることになるのではないか」との疑問には、さらに疑問符がつくことになります。しかし、音楽の利用可能な範囲が画像やビデオより大きいことを考えれば、逆に「ディスプレイが大きいという点で問題を抱える」ことになるのではないかと思います。ディスプレイが大きくなれば、まず携帯性が現在よりも損なわれることになります。次に、音楽より利用頻度の低い、画像やビデオを見るためにディスプレイを大きくするのであれば、せっかくの大きいディスプレイも、結局は音楽の邪魔だったということになりかねません。利用機会、そして利用頻度の大きさという音楽の優位性を考えると、iPodが音楽から軸足を移すことは考えにくく、画像やビデオを主役とするためにディスプレイが大きくなることも考えにくいと思います。たとえiPodのディスプレイが大きくなったとしても、それは音楽の邪魔にならない、携帯性が犠牲にならない範囲のものになると思います。

iPodが他のガジェットより有利な点としては、日常生活での利用可能な範囲が幅広い音楽機能に、その軸足が置かれていることが挙げられると思います。携帯電話は人と人との会話に軸足を置いていますが、会話は利用可能な範囲が音楽と同じくらい幅広いと思います。携帯電話は老若男女を問わず、幅広い人々に使われています。PSPはゲーム機能に軸足を置いています。ゲームは動く画像を見つづけながらそれを操作するという、強い意識の集中が必要になります。そのため、音楽や会話のように、いつでもどこでもOKというわけにはいかないでしょう。その意味で、PSPが世代を超えた幅広い人々に利用される潜在的可能性は小さいと思います。PSPと同じことは携帯型ビデオデバイスにも言うことができるでしょう。

[まとめ]




<< Home

Archives

August 2005  

Mail

macandpal.mail@laposte.net

This page is powered by Blogger. Isn't yours?